概要
- 岩石風化論
- 岩石物性科学
- 地形学
- 自然地理学
- 地盤工学
- 自然災害科学
- 文化財科学
- 分析化学
- 環境科学
各種の分析技術を用いて、材料(とくに岩石、土、鉱物)がもつ様々な性質を調べるとともに、その材料がおかれている環境も可能な限りモニタリングすることで、これらの材料の風化・劣化過程を調べています。
応用面としては、石造・コンクリート造などの建造物の風化と保存修復、地形形成と自然災害の要因の推定、重鉱物や微量元素の分布状況と土壌および地下水汚染などが挙げられます。
研究分野の狭間にいるという特徴を活かし、真に分野融合の研究を目指したいと思っています。
主な研究テーマ
- 岩石等の風化機構と風化速度
- 石造建造物やコンクリート・モルタル造構造物の風化・劣化と保存修復
- 地形形成プロセスと自然災害の要因の推定
- 重鉱物や微量元素の分布状況と土壌および地下水汚染
研究プロジェクト
①:塩類-水-岩石の相互作用と地圏材料の風化・劣化機構に関する研究
「塩」と聞いてまず思い浮かべるのは、食塩でしょうか。食塩の成分は主として塩化ナトリウム(NaCl)ですが、他の塩類も起因しています。それも、実に多種多様な塩類が起因しています。
硫酸塩にしても、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、これらの水和物、復塩、等、数え揚げるだけでもキリがありません(Goudieand Viles,1997,Salt weathering hazardsに多くの塩類がまとめられたリストがあります)。
実は、これらの塩の性質(平衡相対湿度、結晶圧、水和圧など)がよくわかっていません。しかも、復塩ともなると溶解度すら不明な場合もあります。
まずは、物理化学まで掘り下げてこれらの性質を明らかにする必要があります。同時に、岩石側の性質(岩石物性)も明らかにする必要があります。特に、間隙径分布は、塩の結晶化圧も左右する重要なパラメータです。
化学組成や結晶構造(鉱物種)、水質も塩との反応課程を推定し、風化・劣化機構を考慮するうえで重要です。これらのすべてをきちんと理解してはじめて、地形や歴史的建造物に生じた風化・劣化の神髄を知ることができるのです。
基礎研究から応用研究までを網羅したテーマを常に考慮して研究しています。物理化学、岩石学、鉱物学、文化財科学に明るい若手研究者や学生さんで、本プロジェクトにご興味ある方々はどうぞご連絡ください。
②:風化生成物の生成速度を考慮した地形・地質の変化現象に関する研究
同じ岩石名であっても、鉱物の種類や量比が微妙に異なることによって、たとえ同じ環境場でも風化様式が少し変わります。たとえば、博士論文で行った風化皮膜研究では、多様な安山岩について皮膜の岩石物性を明らかにし、空隙の発達の程度が皮膜の発達速度を左右することを示しました。
もはや直接的にはこの研究を行っておりませんが、その後も様々な国の研究者からの問い合わせが続いています。つまり、岩石のもつ特徴ごとに風化様式を明確化していく必要があり、それをもとに地形・地質の変化を考えていくことが、これから重要となると考えます。
具体的なテーマとして最もイメージしやすい例は、崩壊現象でしょうか。風化生成物も含めた崩落可能物質が斜面に十分に溜まると、降雨や地震などのトリガーにより崩壊が生じます。岩質や環境により風化生成物の生産量も変わってきます。ところが、風化現象をきちんと扱える研究者は実に稀少で、度重なる崩壊についても風化から包括的になされた研究は多くありません。
崩壊のみならず、様々な地形地質現象に「風化」の目から迫るべく、研究しております。地形学、地質学、地盤工学、自然災害科学に明るい若手研究者や学生さんで、本プロジェクトにご興味ある方々はどうぞご連絡ください。